大判例

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札幌高等裁判所函館支部 昭和29年(ネ)50号 判決

控訴指定代理人等は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方代理人の事実上の陳述は、控訴指定代理人等において、被控訴人の昭和二十四年度における所得は、その資産増減による所得計算の結果によれば、少くとも金二十五万千八百八十円となり、控訴人認定の本件更正額金二十三万六千六百五十円を下廻るものではなく、この点からみても、本件更正処分は何ら違法ではないと述べたほかは、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

証拠として、被控訴人訴訟代理人は、甲第一号証、第二号証の一、二、(第三、四号証は原審で撤回)、第五、六号証、第七号証の一、二、三、第八号証、第九号証の一、二、第十号証、第十一号証の一、二を提出し、原審ならびに当審証人堀緑、原審証人小野多一の各証言および原審における被控訴人本人尋問の結果を援用し、乙第五号証、第六号証の一、二は不知と答え、その余の乙号各証の成立を認め、同第二十四、二十五号証を利益に援用し、控訴人指定代理人等は乙第一号証の一、二、第二号証の一ないし五、第三ないし第五号証、第六、七号証の各一、二、第八、九号証、第十号証の一ないし十四、第十一号証の一ないし七、第十二ないし第十九号証の各一、二、第二十ないし第二十五号証を提出し、原審証人浅井次八、同大久保末吉、同対馬美代、同武田金太郎、同吉田義隆、同沢井俊孝、同千葉鯱男、同布施幸治、同瀬川照光、同井口秀一ならびに当審証人佐藤鋼一、井口秀一、同清水清の各証言を援用し、原審で証人中村熊蔵(第一、二回)鈴木勘蔵の尋問を求めたが援用せず、甲第六号証、第十一号証の一、二は不知と答え、その余の同号各証の成立を認め、甲第一号証を利益に援用した。

三、理  由

被控訴人が農業を営むものであり、昭和二十五年一月三十一日当時の所轄渡島税務署長に対し、昭和二十四年度の農業所得を被控訴人主張のような算定にもとづき金十二万三千九百六十円、これが所得税額を金二万九千九百円として確定申告をしたのに対し、同税務署長が同年二月十五日右確定申告による被控訴人の所得金額を金二十三万六千六百五十円、所得税額を金九万四千五百五十七円と更正したことは、当事者間に争がない。而して右更正が当時の所得税法(昭和二十二年法律第二十七号)第四十六条第一項の規定によつてなされたものであることは、本件弁論の全趣旨に徴して明らかなところである。

しかし、同法条第五項によれば、かかる処分をなした場合には、政府(税務署長)は、これを納税義務者に通知することとなつており、その注意は、この通知書を送達してはじめて行政処分である更正又は決定の効力が発生する旨を規定したものと解するのを相当とする。そこでまず、本件において、右通知書が果して被控訴人に送達されたかどうかについて判断するに、成立に争のない乙第一号証の一、二、第二号証の一ないし四、第十号証の一、十二および原審ならびに当審証人井口秀一、当審証人佐藤鋼一の各証言を綜合すると、当時渡島税務署長が更正又は決定をなした場合は、まず、当該納税義務者に対する更正又は決定の決議書を作成し、これにもとづいて更正又は決定の通知書を作成し、両者の読み合せをしたうえ、更に発送係において再度両者を照合した後決議書にその旨押印し、納税告知書(右通知書と一連をなす)とともに発送簿に登載して普通郵便で差し出すという順序で発送手続をとつていたこと、昭和二十五年二月二十一日渡島税務署長から銭亀沢村居住の納税義務者に対し昭和二十四年度の農業所得確定申告に対する更正、決定の通知書が相当多数一括発送され、被控訴人と同一部落に住む松田松蔵外三名に、同月二十三日に同通知書が送達されていること、および「昭和二十四年度更正および決定決議書」中の同一丁数欄(乙第十号証の十二)に右同人等とともに被控訴人の氏名が記載されていること等が認められ、これ等の事実を彼此勘案すると、被控訴人に対しても右日時に更正通知書が普通郵便で発送され送達されたと推定すべきであるがしかし、成立に争のない甲第一号証に原審ならびに当審証人堀緑の各証言および原審における被控訴人本人尋問の結果を綜合すると、被控訴人の妻堀緑が昭和二十五年四月二十六日頃偶偶夫の不在中に渡島税務署から「納税について」と題する納税督促の葉書(甲第一号証)を受領したので、不審に思い、同税務署に赴いて係員に呈示して問い合せたところ、同係員から更正の通知があつたかどうかを聞かれ右葉書がその通知であるかの如く説明され、要領を得ないままに一旦引さがつてきたことはあつたが被控訴人は右督促状により本件更正のなされたことをはじめて知るに至つたもので更正通知書は被控訴人に送達されなかつたことが肯認出来る。この認定と牴触する原審証人千葉鯱男、同布施幸治、同瀬川照光の各証言部分は、前顕証拠ならびに原審証人中村熊蔵(一、二回)、同鈴木勘蔵(一、二回)の各証言に対比して、にわかに措信し難く、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。而して、当審証人佐藤鋼一の証言によつても前認定の督促状(甲第一号証)の送達や、係員の説明(同号証中に更正決定の文字をその際記入した)があつたからといつて、これを以て、前記所得税法第四十六条第五項にいう通知と看做されないことは明らかである。

そうすると、渡島税務署長のなした本件更正通知書は被控訴人に送達されず、従つて、行政処分である右更正の効力は未だ発生しておらないものといわなければならない。

その後所轄管轄区域が変更され、亀田郡のうち銭亀沢村を含む五ケ村が渡島税務署の所管を離れて控訴人の所管となり、権限が承継されたことおよび被控訴人が本件更正の無効確認を求めるにつき即時確定の利益を有することは、原審認定のとおりであるから、ここにこれを引用する。

してみると、その他の争点につき判断を俟つまでもなく、被控訴人の本訴請求は正当であつて、もとよりこれを認容すべきである。

よつて、結局以上と同趣旨にでた原判決は相当であるから、民事訴訟法第三百八十四条に則り本件控訴を棄却すべく、控訴費用の負担につき同法第八十九条、第九十五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 西田賢次郎 山崎益男)

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